今ではHANAの看板商品のひとつになった、メッセージ入りの「グリーティングシフォン」。
でも、最初からこんなお菓子を作ろうと思っていたわけではありません。
きっかけは、子どもたちがお世話になった方への贈り物でした。
何かお礼のお菓子を贈ろうと思った時、私はよく、
「ありがとう」
「Thank you」
そんなメッセージがパッケージに書かれたものを探していました。
ただ、お菓子はたくさんあっても、ちょうどいいメッセージが入ったものは意外と見つからない。
そこで、ふと思いました。
「だったら、趣味で焼いているシフォンに自分で書いちゃえばいいんじゃない?」
それが、グリーティングシフォンの始まりでした。
最初の「THANK YOU」は、なかなかの迫力(笑)
そして実際に焼いてみた、最初のシフォンがこちら。
【📷 初代「THANK YOU」の写真】
今見ると……

なかなか力強い「THANK YOU」です(笑)。
当時は、大文字を書くのが精一杯。
それでも、プレゼントしたその場でシフォンを見て、とても喜んでいただけました。
上手に書けたかどうかより、
お菓子そのものに「ありがとう」という気持ちをのせられる。
それが嬉しかったのを覚えています。
「これ、いいかもしれない。」
そこから少しずつ、文字入りのシフォンを焼くようになりました。
実は、文字は全部「鏡文字」
完成したシフォンだけを見ると、普通に文字を書いているように見えると思います。
でも実は、HANAのグリーティングシフォンの文字は、すべて鏡文字で書いています。
シフォン型の底に文字を焼き付けるため、普通の向きに書いてしまうと、型から外した時には左右反対になってしまうからです。
【📷 型の中に鏡文字で「Happy Birthday」と書いてある写真】

まず、シフォン生地の一部に竹炭を混ぜます。
その生地を箸の先につけて、型の底に一文字ずつ鏡文字で書いていきます。
文字だけを一度先に焼き、その上からシフォン生地を流して、もう一度焼成。
型から外して初めて、正しい向きの文字が現れます。
「Happy Birthday」も「Thank you」も、名前も、すべて逆向き。
しかも手書きです。
今ではすっかり鏡文字に慣れてしまって……
「あれ? “s”って本来どっち向きだったっけ?」
と、普通の文字の方が分からなくなることがあります(笑)。
一度、「J」をうっかり普通の向きに書いてしまったことも。
焼き上がって型から外したら……
「し」になっていました(笑)。
鏡文字に慣れすぎるのも、なかなか困ったものです。
箸一本で、ペンで書いたような文字を目指して
やってみて分かったのは、
「シフォンに文字を書く」
というのは、思っていた以上に奥が深いということでした。
文字を書くための竹炭の濃度。
生地の状態。
箸につける生地の量。
箸を動かす速さ。
線の太さ。
少し違うだけで、文字の表情が変わります。
最初の頃は大文字しか書けなかった私も、何度も焼きながら、生地の扱い方や書き方を少しずつ工夫していきました。
今も使っているのは、特別なペンではありません。
箸です。
すべて手書きですが、なんとかペンで書いたような文字に見えるところまできました。
最初の写真と今を並べてみると、
「よくここまで書き続けたなぁ」
と、自分でも思います(笑)。
基本を英字にしているのにも理由があります
HANAのグリーティングシフォンは、現在、基本的に英字でお作りしています。
ひらがなやカタカナにも挑戦してきましたが、曲線が多く、鏡文字でバランスを取りながら書くのはかなり難しい。
もちろん、お客様からいただくご希望には、できる限り挑戦してきました。
というのも、娘の将来の環境を自分で作ろうと考え始めた頃から、私は友人たちからいろいろなお菓子の依頼を受けるようになっていました。
シフォン、タルト、チーズケーキ、ムース、クッキー、パイ……。
本当に何でも作りました。
その頃の私は、いただいたオーダーに対して、
「これも何か意味があるのかもしれない。」
と思っていたように思います。
難しいご依頼が来れば、それも自分への課題。
「できない」と決める前に、
「どうしたらできるだろう?」
と考えて、とりあえず挑戦してみる。
今振り返ると、その一つひとつがHANAの商品につながっていきました。
「遠くの人にも届けたい」から、ロールケーキにも挑戦
HANAを始めると、遠方のお客様からもご依頼をいただくようになりました。
その中には、デコレーションケーキを配送してほしいというご希望もありました。
ただ、生クリームやフルーツを使ったデコレーションケーキを、きれいな状態のまま遠くまで届けるのは簡単ではありません。
そこで考えました。
配送できて、華やかで、メッセージまで入れられるケーキは作れないだろうか。
そして今度は、ロールケーキにも挑戦しました。
【📷 「Sweet MONA」のカラフルロール】
シフォンで培ってきた文字を書く技術と、カラフルな生地を組み合わせて。

【📷 「Best Friends」のロール】
さらに文字やデザインを増やしたものにも挑戦しました。

【📷 名前やイラスト入りのロール】


振り返ってみれば、これもすべて、
「こんなのがあったら喜んでもらえるかな?」
から始まっています。
プレゼントから、また次のご縁へ
今では、グリーティングシフォンをご自宅用だけでなく、プレゼントとしてご注文いただくことが多くなりました。
お誕生日、記念日、感謝の気持ち。
そこに相手のお名前やメッセージが入ることで、世界に一つだけのお菓子になります。
そして、プレゼントを受け取った方が、
「今度は私も誰かに贈りたい」
とHANAにご注文くださることがあります。
リピーターになってくださる方。
プレゼントを受け取ったことをきっかけに、初めてご注文くださる方。
ひとつのプレゼントから、また次のご縁へ。
そんなふうにHANAのお菓子を通して人と人がつながっていくことは、始めた頃には想像もしていませんでした。
始まりは、たった一言の「Thank you」
改めて振り返ってみると、グリーティングシフォンの始まりは本当に単純でした。
子どもたちがお世話になった方に、
「ありがとう」を伝えたかった。
メッセージ入りのお菓子を探したけれど、なかなか見つからない。
だったら、
「シフォンに書いちゃえ!」
最初は、それだけでした。

最初の「THANK YOU」を見ると、今でも笑ってしまいます。

でも、あの一台がなければ、今のグリーティングシフォンもありません。
上手にできるかどうかより、とりあえずやってみる。
失敗したら、また考える。
そうやって少しずつ形になってきたものが、今ではHANAを代表するお菓子になりました。
そして、この「想いを届けるシフォン」に、私はもう一つHANAらしいものを加えたいと思うようになります。
見た瞬間に笑顔になって、切った瞬間にはもっと驚くようなお菓子。
そこで挑戦したのが、
レインボーシフォンでした。🌈
ところが、菓子製造業の許可を取ろうとした時、思いもしなかった壁にぶつかります。
それまで使っていた鮮やかなフードカラーが、
販売するシフォンには使えない――!? 😱
「じゃあ、あの色はどうやって出せばいいの?」
一度は諦めかけました。
でも、
「だったら天然色素でやってやろう!」
ここから、約半年にわたる色との実験が始まります。
次回
「販売するシフォンにこの着色料は使えない!? 天然色素でレインボーシフォンができるまで」
へ続きます。🌈


