娘が「働きたい」と言い始めてから、実際に就労継続支援B型の利用につながるまで。
私たち親子は、相談員さんとの出会い、就労選択支援、事業所の見学・体験など、初めて知る制度や支援を一つずつ経験しました。
当時の私は、「相談員」という存在さえ知りませんでした。
この記事では、HANAが「ここで働きたい」と決めるまでに、私たちが実際にたどった道のりを、母の目線から記録しています。
同じように、子どもの「働きたい」をどう支えたらいいのか迷っている方に、私たちの経験が一つの参考になれば幸いです。
「マックでバイトしてみたい」
HANAがそんな言葉を口にすることが増えたのは、私が「娘の働く場所は母がつくる」とSWEETS LAB HANAを立ち上げて、2年ほど経った頃でした。
「外で働いてみたい」というHANAの変化
私たちが実際にたどった流れ
HANAが就労継続支援B型の利用を始めるまで、私たちはこのような流れで進みました。
「働きたい」という本人の希望
↓
働けそうな場所を探す
↓
希望するカフェで体験
↓
相談員さんとの出会い
↓
就労選択支援を利用
↓
複数の事業所を見学・体験
↓
HANA自身が「ここで働きたい」と選ぶ
↓
就労継続支援B型の利用へ
振り返ると、私が「ここがいい」と決めるのではなく、HANA自身が見て、感じて、選んでいくことが、この過程で一番大切だったように思います。
その頃、HANAは朝の怒りがひどくなっていました。
理由は一つではないと思います。
ただ、毎日同じことを繰り返すマンネリした日常も、その要因の一つなのではないかと私は感じていました。
そして何より、本人の口から、
「カフェで働きたい」
「マックでバイトしてみたい」
という言葉が出るようになっていました。
それなら、HANAが働ける場所を探してみよう。
そう思い、ネットでカフェを探し始めました。
1年前、市役所で出会っていたカフェ
実はその前年。
たまたま手続きのために市役所へ行ったとき、就労支援をされているコーヒー屋さんが出店されていました。
そこでコーヒーをいただいたのですが、そのときは、
「こういうところがあるんだな」
くらいで、なんとなく過ぎていきました。
それから一年。
ネットでHANAが働けそうな場所を調べていたとき、
「あ!ここ、あのときのコーヒー屋さんだ!」
と気づきました。
HANAに見せると、
「行きたい!」
早速連絡をして、体験のお願いをしました。
選ぶのはHANA
HANAは環境にとても敏感です。
私がどれだけ「ここが良さそう」と思っても、そこで働くのはHANA。
だから、選ぶのは本人。
そう思っていました。
実際に体験へ行ってみると、
「ここに通いたい!」
HANAの答えはすぐに決まりました。
それなら早速手続きをして、すぐスタート!
……できると思っていました(笑)
ところが、そんなに簡単ではありませんでした。
就労支援を利用するためには、役所での手続きが必要だったのです。
そして私はここで初めて、
「相談員」
という方の存在を知りました。
「相談員って……必要ですか?」
事業所の責任者の方から、
「相談員さんはついてみえますか?」
と聞かれました。
私の答えは、
「相談員とは? 必要ですか?」
でした(笑)
当時の私は、人に頼ることがあまり得意ではありませんでした。
というより、
「HANAのことは私がやる」
と思っていたのだと思います。
責任者の方から、
「自分で手続きをされる方もみえます。でも相談員さんがいると手続きもスムーズですし、これからHANAさんが自立していくためのアドバイスや支援もしてもらえますよ」
と教えていただきました。
それを聞いても内心、
「そんなの私がやるし」
と思っていた私(笑)
今振り返ると、いろいろなご家族を見てこられた責任者の方には、私の「人に頼りたくない」が伝わっていたのかもしれません。
「自分でされる方もみえますよ」
と言ってくださいましたが、今考えると、なかなか少数派だったのでは……と思います(笑)
電話一本で「この人だ」と思った相談員さん
とはいえ、手続きはなかなか複雑そう。
そこで責任者の方に、おすすめの相談員さんを教えていただきました。
大きな事業所と個人でされている方、それぞれのメリット・デメリットも尋ねました。
私は「担当者が変わらない」という点から、個人でされている相談員さんにお願いすることにしました。
連絡先を教えていただき、即電話(笑)
すると不思議なもので、電話で話しただけなのに、
「この方だ」
と思いました。
とても波長が合う。
そして何より、
「HANAちゃんのやりたい気持ちを大切にしたい」
と言ってくださったことが嬉しかった。
時間のかかる手続きも、HANAの気持ちが途切れないよう、できる限り早く進めてくださいました。
そこで初めて知った「就労選択支援」
そして、もう一つ。
私の知らなかった制度がありました。
「就労選択支援」です。
就労選択支援は2025年10月から始まった新しい障害福祉サービスです。
本人の希望や得意なこと、できること、必要な配慮などを整理しながら、その人に合った働き方や就労先を本人と一緒に考えていくための支援です。
2025年10月以降、新たに就労継続支援B型を利用する場合は、一部の例外を除き、原則として利用前に就労選択支援を利用する仕組みになっています。
HANAの場合も、まず就労選択支援を利用することになりました。
でもHANAには、すでに、
「あのカフェで働きたい」
という明確な希望がありました。
相談員さんも、就労選択支援の責任者の方も、新しく始まった制度の中で、HANAにとって一番良い進め方を考えてくださいました。
せっかくだから、ほかの場所も見てみよう
HANAの場合、就労選択支援を1か月利用することになりました。
その期間に、希望していたカフェで実際に体験・訓練をさせていただけることになりました。
そして、
「せっかくだから、ほかの事業所も見てみましょう。それでも最初のカフェが良ければ、そこに決めましょう」
ということに。
見学・体験したのは3か所。
保護猫や保護犬がいる、セルフサービスのカフェ。
オープンキッチンで接客にも挑戦できそうなカフェ。
そして、最初にHANAが「ここで働きたい」と言ったカフェ。
どこにもHANAの「好き」がありました。
だからこそ、私が決めるのではなく、HANA自身が見て、感じて、選ぶ。
3か所を見た後も、HANAの気持ちは変わりませんでした。
「最初のカフェで働きたい」
その答えでした。
「働きたい」という気持ちを途切れさせないために
就労選択支援の1か月が終わってからB型事業所の手続きを始めていたら、実際にカフェへ通い始めるまでに「どこにも通えない期間」ができてしまうところでした。
そこで相談員さんたちは、役所での手続きにかかる時間まで見越して、終了する少し前から次の申請を進めてくださいました。
HANAの、
「ここで働きたい」
という気持ちを大切にするために。
相談員さん、就労選択支援の方、事業所の方。
たくさんの方のお力添えのおかげで、HANAはスムーズに希望していたカフェでの訓練をスタートすることができました。
本当にありがたくて、お礼を伝えたときに言われた言葉が、今でも心に残っています。
「福祉は本来、そうでなければいけないんです」
「HANAのことは私がやる」と思っていた私
最初は、
「相談員って必要?」
「そんなこと、私がやるし」
と思っていた私(笑)
でも今回の経験を通して、私は今までほとんど知らなかった「福祉」を知りました。
HANAがもし特別支援学校に通っていたら、在学中からこうした制度や支援につながる機会があったのかもしれません。
私たちはそのルートを通っていなかったので、私は相談員さんという存在すら知りませんでした。
そして今回、もう一つ考えるようになったことがあります。
もし今、私がいなくなったら。
HANAはこれから、私だけではなく、こうした方々の力を借りながら生きていかなければなりません。
これまで私は、
「HANAのことは私がやる」
と思ってきました。
だからこそ、HANAの働く場所としてSWEETS LAB HANAもつくりました。
でも、HANAが外の世界へ一歩踏み出したことで、私自身も初めて、人の力を借りることを知りました。
自立とは、何でも一人でできるようになることだけではないのかもしれません。
困ったときには人の力を借りる。
自分を支えてくれる人とつながっておく。
そして、その中で自分の「やりたい」を自分で選んでいく。
それもHANAにとって、大切な自立なのだと思うようになりました。
SWEETS LAB HANAと、大好きなカフェ。
二つの場所でいろいろな経験をしながら、いつかHANAが、
「私はこう働きたい」
という自分らしい形を見つけてくれたら。
今は、そう願っています。
※就労選択支援の利用対象や手続きは、その方の状況や自治体などによって異なる場合があります。この記事では、HANAが実際に就労継続支援B型の利用を始めるまでに経験した流れを中心に記録しています。

